「唯一無二のキャリアを活かした事業を展開するために、まずセミナーをやってみては」。
父の会社を2017年10月1日に承継し、新たに仕事を始めるため相談した支援拠点の方から勧められたのは、コンサルティング業でした。
未知の世界ではありましたが、振り返れば迷いながらもいつも新しい道に飛び込んでは進んできた私。
この時、渋谷の小さな一室で始めたセミナーが、今に続く全国への大きな跳躍台となったのです。
手探りのセミナー開催から、商工会議所との出会い
セミナー開催!でも、集客に苦戦
セミナーって、どうやって開けばいいの? そんな小さな疑問に始まり、調べて、考えて、試行錯誤しながらまずはディスプレイについてのセミナー準備を進めました。
教えたい人と学びたい人をつなぐ学びのプラットフォームに登録して参加者を募り、自分のそれまでの経験と知識をお伝えする内容を資料にまとめたり、何度か開催しましたが、受講者さんは思うように増えません。
「集客するって、なかなか難しいなぁ」と思っていた矢先、セミナー会社の方から「講師として登壇していただけませんか」というオファーが舞い込みました! 2017年11月、事業承継から1ヶ月ほど経った時のことでした。
HPをきっかけに舞い込んだ商工会議所様向けのセミナー講師
セミナー会社の方は、色彩やディスプレイをテーマにした「売り場づくりセミナー」の講師を探していたところ、私のホームページがネット検索でヒットし、連絡をくださったとのこと。
集客の難しさを体験したことで情報発信のためにシンプルなホームページをその少し前に作っていたのですが、VMDインストラクターの資格を持って公的機関からご依頼いただいた仕事実績があり、小さいながらもセミナーを開いていた経歴が早速、役に立った形でした。
思いがけず舞い込んだセミナーは、岩手県の盛岡商工会議所様が主催する伴走型小規模事業者推進事業の一環でした。

2018年2月、盛岡市のホテルで「販路開拓・拡大塾 ディスプレイの基礎と色彩のしかけ」と題してお客様の心をつかむ、魅せる売り場づくりについて企業経営者や創業予定の皆さまに向けてワークショップを交えながら精いっぱいお話しさせていただきました。
出席者の皆さまから「大変勉強になった」と嬉しい反響をいただいたのち、岩手県商工会連合会様の広域地区担当指導員の方から専門家登録の要請をいただいたのですが、その背景には切実な復興への想いがありました。

東日本大震災(3.11)の仮設店舗から、ようやく自分の場所で本設の店舗を再建しようと立ち上がる方々の売り場づくりを支援してほしい、というご依頼だったのです。
2018年11月には岩手県の山田町、2019年9月には野田村へ。東京から地方の単線電車やバスを乗り継ぎ、半日がかりで移動する道のりは決して近くありませんでした。
しかし、実際に現場へ伺って事業者様のお話を伺うと、震災ですべての什器や家具を流されてしまい、近隣の方から譲り受けたバラバラの家具を大切に使いながら、店を続けていらっしゃる現実がありました。
都会のように、洗練された統一感のある什器や家具が揃っているわけではありません。それでも、「なんとかこの場所から、もう一度お店を立て直したい」――そんな事業者様や商工団体さんの切なる情熱が、そこには確かにありました。
形や色が揃っていなくても、今あるものをどう活かし、どう工夫すれば、店主さんの想いと商品の魅力をお客様に届けられるか。
その切実な心に寄り添い、共に知恵を絞らせていただいた時間は、私にとってコンサルタントとしての原点を刻み込む、かけがえのない貴重な体験となりました。
「食のVMD」を軸に、全国の現場へ伴走の輪が広がる
展示会の出展準備から当日、アフターフォローまで企業を伴走
伴走型小規模事業者推進事業とは、地域の商工会や商工会議所が専門家と連携し、小規模事業者の事業計画の策定から実行、その後のフォローアップまでを継続的にサポートする取り組みです。
私の場合、企業の皆様が展示会に出展するための事前準備をサポートし、当日も会場に付き添い、来場者様やバイヤーとのやりとりについて詳しくお知らせするほか、アフターフォローも丁寧に行なっています。
展示会出展の成功は事前の準備が8〜9割を占め、その場に立ったらあとは商談するだけ。立ち止まってくださったバイヤー様にいかに効率的に、必要な内容をしっかりお伝えできるかが肝心なポイントです。
展示会が終わってからは「頑張ったね」で終わらせず、交換した名刺や入手した貴重な情報を有効活用するために、項目を立てて具体的に数値化して達成度を評価し、次に向けた戦略を立てるといったサポートを行なっています。
私のような第三者の目線が入ることで、企業の皆さんは頭や情報の整理ができ、効果測定をもとに、次に自分たちの見せ方、伝え方をどう変えていく必要があるかといった検討材料になります。
大手商社の大規模ブース監修で得た確固たる自信
セミナー講師として登壇するようになると、幅広い業種の方からそれぞれの現場で抱える課題などについて質問もいただきます。そんな時、それまでのさまざまな現場での経験が大いに役に立ちました。

例えば、お菓子の総合商社「コンフェックス」様が幕張メッセでの「スーパーマーケット・トレードショー」に出展された際、展示ブース全体のVMD・ディスプレイを担当させていただいた経験です。ブースや会社の規模も大きく、動く人数も非常に多い現場でした。
中小企業の一般的な小間(3m×3m)の展示とは規模も考え方も大きく異なりますが、入念な下準備やシミュレーションを重ね、何度も打ち合わせを繰り返しながら、本番の展示・ディスプレイまでを一貫して監修しきったこと。
そして何より、前日の現場ディスプレイまで社員の皆さんと一緒に作業に向き合い、汗を流した経験は、私にとって大きな自信となり、かけがえのない実績となりました。
机上の指示だけで終わらせず、現場で共に汗をかく姿勢は、今の中小企業の皆様への伴走支援にも真っ直ぐに通じています。
地元の実店舗づくりと展示会をつなぐ「唯一無二の支援」
大変ありがたいことに、次第に全国のさまざまな地域からお声がけをいただき、飲食関係に限らず、地場産業の企業様をご支援する機会が増えていきました。
当時、国や自治体の施策として地域産品の販路開拓が強力に推進され、展示会への出展支援をはじめ、首都圏(秋葉原などの商業施設やアンテナショップ)でのテスト販売に力を入れる動きが活発化していました。
企業様にとっては、展示会での商談はもちろん、アンテナショップでのテスト販売、さらにはそこでの学びを持ち帰って「地元の店舗の売り場」へ活かすことまで、すべてが地続きの課題だったのです。
そうした中で、「リアル店舗の売り場づくり」と「展示会向けの伴走支援」の両方を熟知し、現場レベルで一貫してアドバイスできる専門家として私を見出していただき、各地からのご相談へとつながっていったのだと感じています。

例えば、兵庫県の商工会議所様の皆さまとは継続してご依頼をいただいており、伴走支援を重ねて長くご縁が続いて6年目になります。
地場産業である金物関連のメーカーの方が多く参加されていて、地元で何代も仕事や人のつながりを受け継ぎながら、自分たちらしいものを作っていこう、という意欲をお持ちの皆さんです。
私のバックグラウンドとして、父の兄弟が皆、美濃焼の窯元や卸商なので、同じようにモノづくりに取り組む三木の皆さんのお話は深く共感する部分も多いせいか、皆さんから「話を理解してくれてありがたい」という言葉を何度かいただきました。
年数を重ねるごとに展示会に出展する企業様は変わりますが、若い世代の皆さんは横のつながりが強く、慣れない展示会出展の作業を効率よく進めるため、細やかに情報交換をする中で、私の伴走支援に対して信頼感を持ってくださるのも嬉しい限りです。
また、実際に展示会で成果が出たり、次第に皆さんが地力をつけ、自分たちだけで考え、自走できるようになる姿を拝見することは自分のことのように嬉しく、講師冥利に尽きます。
伴走者としての信念と、独自の強み
資格取得でキャリアアップ、大手企業セミナーへ
2022年にはより幅広いお客様のご要望に自信を持ってお応えできるようキャリアアップを図り、シニアVMDインストラクターの資格も取得。
起業直後は「これでいいのかな」と悩みながら、手探り状態で走ってきましたが、今では全国各地の皆さまとご縁をいただくことができたことに本当に感謝しております。
大手企業様を対象とした有償セミナーに登壇する機会もいただくようになり、「食のVMD」という専門知識を軸に、飲食や食品の魅せ方、売り方の実践ノウハウをお伝えできたことで、自分の中で大きな自信とさらなるモチベーションにつながっています。
対話から引き出す「本音の核心」と、生活者・女性視点の提案
個別にご支援する中で、多くの中小企業の方は「困っている」けれど、「何に困っているのか」が明確に理解できていない場合も少なくありません。
そんな時、私が何より大切にしているのが「対話」です。
じっくりと言葉を交わす中で、事業者様ご自身も気づいていなかった「本当に目指したい心理」や「自社の強みの核心」のようなものが、ふとした瞬間にポロっとこぼれ落ちてくることがあります。
それを丁寧に拾い上げ、「御社が本当に伝えたい価値は、ここですね」「そうであれば、この手順で伝えていきましょう」と言語化して差し上げると、一気に解決への視界が開けていきます。
特にものづくりの現場は職人気質の男性が多い世界でもあります。
そこに、私のような「買い手や生活者としての女性視点」を交えて『実際の顧客にはこう映っていますよ』とお伝えすることで、「なるほど、そこが伝わっていなかったのか!」と大きな気づきが生まれます。
地方と都市、両方の現場を知る私だからこそ、皆さんが向き合っている壁を壊し、挑戦する意欲をサポートできればといつも思っています。
2026年、これからの私――商品が輝く売り場を求めて
AI時代だからこそ大切にしたい「生きた戦略と五感」
今、時代は2026年。
AIをはじめとするテクノロジーが急速に進化し、日々の業務も格段に効率化できるようになりました。
私自身もその便利さを実感しています。
けれど、テクノロジーがどれだけ進化しても、「AIには代替できない、人間ならではの生きた戦略と五感」こそが、これからの時代にますます大切になると感じています。
画面越しでは測れない現場の空気感、生活者の五感を揺さぶる魅力、そして対話を通じて相手の心の奥にある情熱を引き出すこと。
それは、人と人とのリアルな関わりの中でしか生まれません。
振り返れば、人前でお話しすることは、私にとって好きという以上に「得意な強み」でした。
私の言葉を通じて「聞いてよかった!」「明日からまたやってみよう」と相手の心に火が灯る瞬間に出会えることが、何よりの喜びです。
「この商品がどうしたら輝けるか」――夢中になれる情熱を胸に
そして、私が一番好きなことは、やっぱり「売り場作り」です。
それは小手先のテクニックではなく、「この商品が、どうしたらいちばん輝けるだろう?」という視点に立ち、自分が過去に培ってきたさまざまな現場経験に照らし合わせて、最高の見せ方と道筋を考えること。
その先で、お客様が商品を手に取り喜んでくださる未来を想像すると、今でも時間を忘れて夢中になってしまうのです。
リアルな現場での伴走支援はもちろんのこと、全国のまだ出会えていない方々へ向けて立ち上げたオンライン講座「売場の学校」を通じても、商品が輝く売り場づくりの輪をさらに全国へ広げていきたいと考えています。
場所や規模に関係なく、想いを持った作り手や、自立を目指して挑戦する方々が自ら売場を創り、自走していける仕組みをお届けしたいのです。
便利な時代だからこそ、人との対話を重んじ、商品が持つ本来の輝きを引き出す五感の提案を届けたい。
これからも全国の必要としてくださる場所へ出向き、皆さんと共に悩み、考え、商品が輝く未来を創り出す伴走者であり続けたいと思います。
全22回にわたり、私のこれまでとこれからの歩みにお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
これからも全国の温かいご縁に感謝しながら、一歩一歩進んでまいります!



