コラム私のこれまでとこれから

通販で食品が売れるのは深夜と早朝!?バイヤーとして商品を“磨き”、売る極意

コラム

段ボール三つで名古屋から上京し、派遣の仕事で生活基盤を築きながら、フードスタイリストや食に関わる仕事を目指して就職活動を続けました。
その結果、希望に近い食品関連の会社に中途入社。
そこで初めて挑戦したのが、後に起業してからも大いに役立つことになる「バイヤー」としての経験でした。
多様な現場でそのスキルを磨く機会に恵まれたのです。

通販事業部で“未知の領域”に挑戦

上京から約4ヶ月。
派遣社員として花屋や大手食品商社での営業事務など、調理師やフードコーディネーターの資格を活かせる様々な職場で経験を積みつつ、本格的に食の仕事に就くための足場固めと就職活動を並行していました。

そんな中、「フードコーディネーターで企画営業ができること」を募集要件とする食品会社を発見。
通販事業部という未知の領域でしたが、迷わず履歴書を送りました。
フードスタイリストとしての実務経験が評価されたのか、面接もとんとん拍子に進み、幸運にも中途採用が決定したのです。

入社2日目から「バイヤー」の仕事がスタート

外食産業を営む食品の生産から製造、レストラン事業や販売事業まで幅広く展開する株式会社フードワークス(仮称)に入社して、わずか2日目。

私はすでにメーカーさんとの商談の席に着いていました。
通販で販売する商品の仕入れや商品開発について、細かな条件や数字を提示しながら検討を重ねる――。
まさにその瞬間から、私の「バイヤー」としてのキャリアが幕を開けました。

会社は通販という形で商品を販売する「ベンダー」であり、私はその最前線で商品を仕入れ、魅力的な商品へと磨き上げる役割を担うことになったのです。

「ベンダー」とは、流通経路で小売業者(お店)に販売・供給する会社のこと

それまでの卸業や小売店との折衝経験はあったものの、通販業界のバイヤー業務は初めて。
先輩社員から指導を受けながら、まさにOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)です。
試行錯誤の日々でしたが、必死に知識とスキルを吸収していきました。

当時の通販事業は、主に二つの柱で成り立っていました。
一つは、民放を含めたテレビの
通販番組を通じた販売もう一つは、紙のカタログ(ギフト・産直)【BtoC】を制作し、それを用いて販売する方法です。

お客様に商品を認知していただくメディアは異なりますが、メーカーさんや関連企業の方々と交渉し、共に企画開発や商品アレンジ、販売戦略を練り上げ、最終的にお客様へお届けするという本質的なプロセスは同じでした。

テレビ通販では時間枠内の販売目標を設定

ここでは、当時私が垣間見た“テレビ通販の裏側”を少しご紹介しましょう。

特に印象深いのは、24時間・365日放送のテレビショッピング専門チャンネル「QVCジャパン」さんでの商品販売です。

皆さんも、「これまでに〇個、売れています!」「ただいまお電話が大変混み合っています!」「限定数に達しました!」といったナビゲーターの言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

通販番組では、放送時間枠内での販売目標が厳密に設定されており、お客様に「買いたい!」と思っていただけるよう、あらゆる工夫が凝らされています。

なぜなら、視聴者の皆さんは、番組で商品を見るや否やインターネットで上代(一般小売価格) や口コミをチェックされる時代。
一般流通している商品をそのまま紹介しても、なかなか売り上げには繋がりません。

そこで重要になるのが、商品を販売する私たちの企画力や目利き、専門知識です。
これらを駆使してメーカーさんと共に商品をブラッシュアップし、付加価値の高い形でご紹介する必要があるのです。

秒単位で変化する売り上げと、時間との戦い

24時間放送のテレビ通販において、特に食品がよく売れるのは、意外にも深夜0時から1時頃、そして早朝の6時から7時頃でした。

特に深夜帯は、音量を絞って視聴される方が多いため、ナレーションに頼るだけでなく、商品の魅力が一目で伝わるようなビフォーアフターの映像や、シズル感あふれる画像など、視覚的な訴求力を高める工夫が不可欠でした。

QVCジャパンさんの番組では、番組進行を巧みにリードするプロの「ナビゲーター」さんと、商品の専門家である「ゲスト」(多くはメーカーの担当者さんです)が掛け合いながら、商品の魅力を伝えていきます。

特にゲストの方は生放送に不慣れなことも多く、放送で使ってはいけないNGワードなどへの配慮も必要です。
そのため、事前に綿密な台本を作成し、効果的な話し方や間の取り方などを一緒にトレーニングすることも、私たちベンダーの大切な役割でした。

限られた10分、20分という放送枠の中で、商品の説明を何回繰り返すか、料理のシズル感をいかに効果的に見せるかなど、秒単位での構成や演出プランを練り上げます。

良くも悪くも、視聴者の反応がリアルタイムで売上数字に反映されるのが、テレビ通販のシビアな点であり、同時に大きなやりがいでもありました。
まさに時間との戦い。
商品を一つ売るために、膨大な体力と知力が求められる現場だと痛感しました。

さらに通販事業では、単に「商品を売る」だけでなく、「お客様に商品を確実に届ける」ところまで責任を負います。この「販売責任」への意識は、バイヤーにとって不可欠な要素です。
この点については、次回のコラムで詳しくお話ししたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました