コラム売り場づくりのヒント

【取材記事紹介】「おいしそう」を生み出すフードコーディネートの裏側

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フードプラス・クリエイトの日々の活動やこだわりについて、今回は外部のライターの方に取材していただく機会に恵まれました。
フードコーディネーターとして、どのように「おいしそう」なビジュアルを作り上げているのか、その準備段階から撮影本番までを丁寧にレポートしていただきました。
ここに、その際に作成いただいた記事をご紹介します。

“おいしそう”はこうして生まれる~フードコーディネーター林由希恵さんのお仕事レポート~

雑誌や広告で目を引く、美味しそうな料理の写真。
思わず食欲をそそり、味や香り、さらには食感までも想像させるその一枚には、プロフェッショナルの技術と工夫が詰まっています。

今回は、フードコーディネーターでありVMDインストラクターとしても活躍する林由希恵さんに密着し、「おいしそう」を生み出す舞台裏に迫ります。

撮影準備からはじまる「おいしそう」の演出

この日は、お菓子のバイヤー向けマーケティングブックの撮影。
筆者が現場入りすると、林さんはアシスタントさんと撮影準備の真っ最中でした。
キッチンにはお菓子やお皿、小道具などが所狭しと並べられています。

林さんはトレーの上に複数のお饅頭を並べ、じっくりと見比べていました。
まるでオーディションを行うように、最適なものを選んでいるのです。

「同じ商品でも一つひとつ状態が違うので、どれが撮影に最適かを選んでいます。
ほんの少し凹んでいたり、欠けていたりするだけでも、写真にすると大きな差になりますから」

と林さんは言います。

撮影に使うお皿選びも重要な工程の一つなのだそう。
さまざまな形や素材の皿を並べ、実際に商品を乗せながら、クライアントと雰囲気を確認します。

「お皿で写真の印象が大きく変わるんです。
陶器、ガラス、木製プレートなど材質によっても形状によっても見え方は変わるので、『その紙面の中で、商品をどう見せたいか』を丁寧にヒアリングしながら選びます」

と林さん。

「おいしそう」を生み出すフードコーディネートの裏側

クライアントの疑問や要望に応えつつ、寄り添いながら進めていく姿勢が印象的でした。

お煎餅の「パリッ」を視覚化する技術

次に取り組んだのは、お煎餅の撮影。
テーマは「パリッ」という食感をどう写真で表現するかでした。

林さんは割れ目の形や方向を綿密に計算しながら丁寧に割り、小さな欠片(かけら)まで配置して、立体感を演出していました。

「おいしそう」を生み出すフードコーディネートの裏側

「お煎餅も、割り方一つで印象が変わります。
ただ割るのではなく、写真映えする割れ方をイメージして逆算して割っています」

と林さん。
完成した写真は、静止画でありながら「パリッ」という音が聞こえてきそうな、五感に訴える仕上がりでした。

「無造作」は緻密に計算された配置

続いて、撮影されたのは琥珀糖。
鮮やかな色彩と透明感のある琥珀糖を「無造作に」散りばめた写真にすることがテーマです。
筆者は「無造作に配置するだけなら、それほど時間はかからないだろう」と安易に考えていました。
しかし、それは大きな間違いだとすぐに気づきました。

林さんは琥珀糖を一粒ずつ手に取り、最も美しく見える配置を模索していました。

「影の映り方や粒同士のバランスまで意識することで、自然でありながら印象に残る写真になります。
無造作に見せるには、実は細部まで作り込む必要があるんです」

と林さんは言います。
そうして仕上がった写真は、まるで宝石箱からこぼれ出たようなワクワク感に満ちていました。

シズル感の演出にみた創意工夫

ひときわ印象的だったのが、「おしるこ最中」の撮影です。
この商品は、熱湯を注ぐだけで本格的なおしるこが楽しめるもの。
今回のテーマは、お湯を注ぐ瞬間を切り取り、臨場感のある写真にすることです。

しかし、この撮影には課題がありました。
通常の作り方では、熱湯を注ぐ段階で粉とお湯が混ざらず、かき混ぜると最中が崩れるため、写真映えしないのです。

そこで、林さんは通常とは異なるプロセスで撮影に臨みました。
まず、最中を慎重に割り、中の粉を丁寧に取り出します。
その際、林さんは

「最中は、切れ目を先に入れてから、優しく手で割りました。
これは自然で温かみのある断面にするためです」

と説明します。

「おいしそう」を生み出すフードコーディネートの裏側

次に、規定量よりも少ない熱湯で粉を溶き、均一なおしるこを仕上げ、割った最中をそっとお椀に浮かべます。

「最中は、お湯を注いだ時に動いたり、沈んだりしないように余白を考慮して配置しました」

と林さん。
ここまでの準備を終え、ようやくカメラの前で熱湯を注ぐ撮影がスタートしました。

湯気の立ち方やお湯を注ぐ角度、流れ幅までこだわり、何度もシャッターが切られました。
完成した写真は、寒い冬にきっと心まで温めてくれる“おいしさ”を想像できる一枚に仕上がっていました。
林さんの創意工夫、プロの技術に筆者は脱帽するばかりでした。

取材を終えて感じたこと

林さんはフードコーディネーターであると同時にVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)のインストラクターとしても幅広く活躍されています。
食をメインとした商品の見せ方や売り場の演出を専門とし、視覚的な体験を通じて顧客の購買意欲を高める仕組みづくりを提案されています。

「商品の背景や購入後に広がるストーリーを伝えることで、初めて消費者の心を動かす売り場や写真が生まれると考えています。
見る人に『おいしそう』『食べたい』『欲しい』という感情を自然に抱いてもらえるよう、クライアントと共に細部までこだわり抜いて形にしていくこと。
それが私の仕事の流儀です」

と林さんは話します。

「おいしそう」を生み出すフードコーディネートの裏側

「おいしそう」を生み出す仕事の裏側には、林さんのプロフェッショナルとしての揺るぎない技術と、食を通じて人々に笑顔を届けたいという情熱がありました。


ライターさんの視点を通じて、仕事の一部をご紹介させていただきました。
フードプラス・クリエイトでは、このように一つ一つの工程にこだわりを持ち、食の持つ魅力を最大限に引き出すお手伝いをしています。
撮影やVMDに関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。

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